「帰りたくない!」
よっぽどうちが気に入ったのか
玄関前でぐずる、この小さな小さな少年を
昨晩から預かった。
うちは小さな子どもが喜んで泊まりたがる
家ではないので、夜中には
かぁちゃんのおっぱい恋しさに
帰る帰ると言い出すだろう。とたかをくくった。
よほどやんちゃくれすると思いきや、
驚くほどのおりこうさんで
大人より手がかからない。
しつけの行き届きにいちいち度肝を抜かされた。
劇団なんちゃらの子役さながらの
台詞まわしだ。
いや、台詞じゃあないんだが。
天使の声で
「おいしいです、いい味付けですね」
なんて敬語褒め言葉の連発だ。
それでいて媚びるような、こまっしゃくれた感じはない。
今日も泊まるというので
「このままうちの子になるぅ?」
と聞いたら
「そうしたいです」
と神妙に答えた。
そして
「この家は喧嘩がないのがいいです・・」
と続けた。
なんだか。キューン。と、した。